がんと免疫1
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13 免疫細胞には外敵を発見するもの、外敵の情報を伝えるもの、攻撃の指示を出すもの、直接的に攻撃するものなど、周到なバランスで異なる役割を担うさまざまな種類がある。その全貌はまだ明らかになってはいないが、今後さらに免疫の仕組みの解明が進むことで、医療の大きな進歩が期待できると考えられる。がん治療の際も、治療の効果を支えるのは、患者自身の免疫の力なのだ。Column標準的がん治療に必要な免疫の力1●清野研一郎(北海道大学遺伝子病制御研究所)免疫の力が医療の未来を切り拓く免疫細胞の正体は白血球多能性造血幹細胞リンパ球系幹細胞骨髄系幹細胞多能性造血幹細胞から分化した細胞で、リンパ球系の細胞になるための途中の段階にある細胞(前駆細胞)。リンパ球系幹細胞と同様、多能性造血細胞から分化した細胞。分化成熟して、赤血球や血小板あるいは、もともと体に備わっている「自然免疫系」の免疫細胞のもとになる。血液には白血球・赤血球・血小板などの成分が含まれており、そのうちの白血球こそが免疫細胞。血液は骨髄で造られるが、骨髄のなかにはすべての血球のもとになる多能性造血幹細胞があり、それが分化して、各々の免疫細胞になる。すべての血球のもといろいろな細胞に分化できる幹細胞免疫機能の中心的役割   疫には2つのシステムがあり   ます。一つは樹状細胞やマクロファージ、NK細胞、好中球などが病原体の発見と初期攻撃を行う自然免疫です。それに対し獲得免疫は、T細胞やB細胞が、自然免疫から情報を受け取って活性化し、自ら分化して病原体を攻撃、防御する免疫です。この2つの免疫システムの連携は非常に重要です。最近の研究で、免疫の機能をわざとなくした実験用のマウスにがんを植えつけ、抗がん剤や放射線で治療をしたところ、正常なマウスのがんは小さくなりましたが、免疫不全のマウスでは縮小せず治療が効かなかったという結果が出ました。抗がん剤や放射線である程度やっつけられ、壊されたがん細胞の中からは、がん細胞の目印やさまざまな情報が出てきます。これを自然免疫の細胞が認識して攻撃部隊であるT細胞などに情報を伝え、がん細胞を攻撃します。ところが、免疫不全のマウスでは、こうした仕組みが働かず、がん細胞を制御することができなかったのです。免疫が働いていない状態では、抗がん剤や放射線治療をしても充分な効果が得られないということは、標準的ながん治療を行うにあたっても患者さん自身の「免疫の力」が非常に重要であり、がん治療に不可欠なキー(鍵)であることを物語っているのです。免疫不全マウス●大腸がん細胞抗がん剤治療**正常マウス3002   4   6   8   10   12   14   16 (mm3)2001000腫瘍の大きさ治療開始後日数正常なマウスでは腫瘍の大きさはほぼ横ばいだが、免疫不全マウスでは拡大し続けた。免白血球顆粒球系60%リンパ球35%単球系細胞5% 血液は約55%の液体成分と、酸素を運ぶ赤血球や出血を止める血小板、免疫細胞から成る白血球でできている。白血球のなかで60%を占めるのが顆粒球で、傷口に細菌が侵入しようとすると傷口に集まって退治し、自らも膿となって死滅する。次いで多いのがリンパ球。一度侵入した外敵を記憶するため、同じ敵が再び侵入すると、即座に攻撃する。単球系細胞(樹状細胞、マクロファージ)はわずかに5%程度だが、免疫システムの司令塔という重要な役割を担っている。

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