がんと免疫1
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16がんと免疫 ❶古くて新しい免疫の歩み紀元前●古代アテナイの歴史家、トゥキュディデスが「二度なし現象」を記す 著書『戦記』のなかで、トゥキュディデスが、ペストに一度かかった者は二度とかからなかったことを「二度なし」という言葉で記述。免疫の概念を表した世界初の記述として19世紀末に細菌学者パスツールが再発見した。14世紀●ペスト(黒死病)が猛威を振るう17世紀●「体液病理学説」に対して「病原微生物」という概念の誕生 西欧では体液のバランスが崩れると病気になるという「体液病理学説」が信じられてきたが、17世紀になると感染症の病原は微生物であると考えられるようになった。●顕微鏡で「病原微生物」をつきとめようとする動きが始まる●天然痘が猛威を振るう1798年●イギリスの医学者、エドワード・ジェンナーが天然痘ワクチンを発表 人工的な牛痘(天然痘に似た牛の病気)によって人痘に対する免疫ができることを実証。世界初のワクチンが誕生した。19世紀●コレラと結核が猛威を振るうキーワード がん細胞などの異常細胞がもつタンパク質を貪食するなどし、自らの細胞の表面に提示して、T細胞などのリンパ球に認識させる樹状細胞などの細胞のこと。攻撃部隊となる免疫細胞にとって欠かせない、司令塔の役割を担う。抗原提示細胞 免疫細胞は忠実に任務をこなし、見事なチームプレイでがん細胞などの外敵からわたしたちの身体を守っています。ここでは、もう少し詳しく免疫とがん細胞との関係を見てみましょう。 免疫とは、自分以外の異物を見分けて排除する仕組みです。しかし、そもそもがん細胞は自身の細胞が突然変異してできたものなので、自分の一部でもあります。そのため、非常に見分けにくい細胞でもあります。 では、なぜ免疫はがん細胞を見分けて攻撃できるのでしょう?  それは、がん細胞にはほかの細胞とは異なる特性があるからです。それが「がん抗原」と呼ばれる特別なタンパク質で、免疫が攻撃する際の標的となります。 しかし、なかには抗原を出さないがん細胞や、免疫を抑制する物質を出すがん細胞もあります。がんは、優秀な戦闘部隊である免疫細胞にとっても、一筋縄ではいかない「頭のいい」強敵なのです。「頭のいい」がん細胞との壮絶な戦いニコラ・プッサン『アシドドのペスト(ペストに襲われるペリシテ人)』1877(明治10)年、日本で制作されたコレラ予防を呼びかける木版画。 CTL前駆細胞がん細胞樹状細胞ヘルパーT細胞サイトカインを産出CTL(細胞傷害性T細胞)ガンマ・デルタT細胞NK細胞NKT細胞© Kayomi Tukimoto

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